平素より、日本通訳士協会をご愛顧頂いておりますお客様、ビジネスパートナーの皆様、関係者の皆様、誠にありがとうございます。この場を借りて感謝申し上げます。
皆様からのご支援により、日本通訳士協会は設立8年目を迎えることができました。日本通訳士協会では高度な通訳技術を持った通訳士の育成を中心に、通訳技術の普及、通訳・翻訳業界の健全な発展、英語教育の推進に取り組んでおり、今年は本科修了生も輩出するなど、日本の通訳業界の発展に寄与してまいりたいと考えております。
日本の国際競争力を高めるためには、それぞれの強みを活かし、自分自身の専門性で戦う人と、言語の領域はプロの通訳士にアウトソースし、補完してもらうというように専門性の分業が必要となります。1億人全ての人がそれぞれの専門性を磨きながら、語学力もプロレベルまで高めようとするのはあまりにも時間がかかり非効率となってしまいます。
そこで日本通訳士協会では、語学のプロを養成し、非常に高度な通訳技術を持った通訳士を育成することにより、クライアントの耳となり口となり、まるでお互いが母国語でコミュニケーションを取っているかのように円滑に会議を進めることができるようになります。
最近では、通訳を交えたオンライン会議が一般化し、それでいて従来の対面での通訳会議需要も戻り、通訳サービスの提供スタイルが多様化しつつあります。その中でも、やはり「人と人とのコミュニケーションの需要」は普遍的に存在しており、機械翻訳だけでは満たしきれない、人の言葉の価値はますます高まっていくものと考えられます。
日本通訳士協会では、話者の想いや意図の部分まで理解し、それを通訳時の訳出に乗せて伝えるという訳出方法を研究・実践し、高度な訳出ができる通訳のみに通訳士という資格を与え、ブランド化を図っています。これにより、クライアントは「日本通訳士協会で訓練を受けた通訳士の人であれば安心して会議通訳を任せられる」という安心感を得ることができます。それは、日本通訳士協会が通訳士の通訳品質を保証する役割を担っているからです。だからこそ我々の使命は、確かな通訳技術を持った通訳士だけを社会に輩出し、かつ、優秀な通訳士を1人でも多く育成することです。
現状では、投資資金不足により、日本通訳士協会の認知度を高める活動に予算を割くことが難しく新規受講生人数は横ばいとなっています。しかし、先述の通り、集客のみに邁進し、通訳技術が伴っていない通訳士を輩出してしまっては、通訳士の信頼性がなくなり、本末転倒になってしまいます。そのため、日本通訳士協会は短期的な規模や業績といった指標を重視せず、「年輪経営」と呼ばれるようなゆっくりと着実に根を張る経営によって少しずつ社会からの信頼性を勝ち取ってまいります。
日本通訳士協会の通訳士養成講座で指導している内容は通訳士を目指す通訳の卵だけではなく、ただ英語力を高めたい英語学習者のセグメントにも刺さる内容となっています。そのため、今期は「プロの通訳になりたいわけではないけど、英語力は高めたい」という層に対してしっかりと「通訳訓練を受けることでより早く英語力を身につけられる」という顧客メリットを効率的に市場に向けて発信していくことが課題となっています。
そのためには、メディアを活用としたPRやメディア露出が必要不可欠となり、日本通訳士協会の活動や理念に共感して下さる方と一緒に組むことで、日本通訳士協会をより広く社会に認知してもらえるようにPR活動などにも取り組んでまいります。
また、日本通訳士協会は営利企業ではないため、顧客の奪い合いによって値下げ競争を起こし、マーケットを破壊してしまうような利己的な動きは今後もしません。日本通訳士協会は通訳の価値を高め、それぞれの通訳エージェントの利益率を高め、現場で日々働く通訳者さんの所得を高めるための仕組みを作り、その理念を発信し続けることで通訳業界を守る城壁のような役割を今後も担ってまいります。
機械翻訳の発達により、無料で高度な翻訳ツールを使用できるような社会になったがゆえに、通訳市場が衰退すると感じて通訳士を目指す人が減ってきているように感じます。しかし、実際には通訳需要は減っていないどころか需要は増加傾向にあり、そのため、優秀な通訳士が不足する事態となっています。それにより、優秀な通訳士には仕事が絶えず流れ込みさばききれない状況となっている一方で、高度な通訳技術が求められる通訳士が不足しているため業務を担える人が不足した結果、業界全体では手すき状態の通訳が多く発生している状態になっています。
この需給バランスを改善するために、日本通訳士協会として、プロとして活動した経験を持つ中間層の通訳者に通訳訓練を行い、より高度な通訳技術を持った通訳士を多く輩出しながら、通訳士を目指す次の世代の通訳士の卵を多く集め、任せられる簡易的な通訳サービスはどんどん任せていくなど、専門性に応じて適切に業務と人をマッチングさせていく業務の割り振りをより的確に行ってまいります。これにより、高度な通訳品質を求めるクライアントにはより高度な通訳サービスを提供することが可能になり、それでいて、より安価な通訳サービスを求めるクライアントにはより低価格の通訳サービスを提供することが可能になります。
日本通訳士協会では、「絶対にミスがあっては困る会議を必ず成功させる」という強いプロ意識を持って、どの業界であっても、どれだけ大きな金額が動く会議であっても、「日本通訳士協会の通訳士さんが通訳をしてくれたおかげで無事に成約になったよ。ありがとう」と言われるような通訳サービスを今後も提供し続けてまいります。
これからも日本通訳士協会は、たゆまぬ改善と研究により、クライアントが求める期待を超える通訳サービスを提供し、高い付加価値を提供できる通訳サービスを通して社会に貢献してまいります。
私たちの事業に対してご期待頂きますとともに、引き続きのご支援を宜しくお願い申し上げます。

2022年2月13日
一般社団法人日本通訳士協会
代表理事
轟 義昭